ITトピックス
2023.03.31
「DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル変革)」に関連するキーワードとして、自治体でのDXを意味する「自治体DX」という言葉を昨今、頻繁に耳にします。
自治体DXとは、ICT技術などを活用し、限られた人的リソースの中でも行政サービスを充実させ、住民の満足度を向上させる取り組みを意味します。
総務省が「自治体DX推進計画」を定めて推進する自治体DXは、住民の便益に主眼を置いている点が特徴です。少子高齢化に伴う労働人口減少や、増え続ける地域社会の課題を踏まえると、最優先で取り組むべき事項と言えるでしょう。
そこで今回は、自治体DXの必要性や推進する際のポイントなどの基礎知識、取り組み方を解説します。
自治体DXとは、地方自治体・地方公共団体の住民向けサービスなどの業務を、ICT技術を活用して変革することです。
具体的には、デジタルツールやデータを活用することで、住民サービスの利便性向上や、業務効率化による一層の行政サービス充実を実現する必要があります。
なおDXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を利活用してビジネスやライフスタイルを変革し、事業や社会をより良くする取り組みのことです。
DXについては、以下の記事で詳しく解説しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル変革)とは? デジタル化との違いとDXの本質
自治体DXの推進が必要な背景には、労働人口の減少やレガシーシステムといった課題があります。
労働人口減少による過疎化・職員数削減への懸念
少子高齢化に伴い、労働人口は減少する一方です。この弊害を解消するうえで、自治体DXは欠かせません。
労働人口減少に伴い、地方では、産業の衰退や空き家・工場跡地の問題、税収減による行政サービス維持困難など、課題が山積みです。自治体の職員数も削減される傾向にあります。
そこで、自治体DXで業務効率化などを実現し、少ない人員でも多様な課題を解決できる体制づくりが急務となっています。
色濃く残存するアナログ文化・レガシーシステムの問題
効率化を妨げるアナログ文化やレガシーシステムを一掃するために、自治体DXの推進が必要です。
自治体には、FAX・印鑑などを用いる紙業務や、保守管理コストがかさみ連携しづらいレガシーシステムが多く存在するにもかかわらず、業務プロセスの刷新は進んでいません。
効率化や地域間連携(広域連携・遠隔型連携)を促進するには、自治体DXの推進によるプロセスの変革が欠かせないでしょう。
自治体DXを効果的に推進するには、人材確保・計画立案の2つのポイントを押さえる必要があります。
DX人材の確保
ICT技術を行政サービスの向上につなげるには、デジタル技術とその活用法に精通し、主体的に変革を進められるDX人材の確保が必要です。
DX人材の獲得方法には、採用と育成の2通りがあります。ただし、採用の難易度は高く、DXを担う人材は大幅に不足しています。リスキリングなど、育成による確保を検討すべきでしょう。
DX人材が不足している背景や、育成モデル例を詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
長期的・横断的な視点を持った計画立案
自治体DXを実施するまでの基本的な流れは、以下の3ステップです。
DXの必要性を共有
全体的な計画立案
体制の準備
各ステップの注意点を確認しておきましょう。
自治体DX実施時の注意点
①DXの必要性を共有 |
・職員一人ひとりが具体的なビジョンを持つ ・住民のニーズを重視して取り組む |
②全体的な計画立案 |
・成果を急がず長期的な計画を立てる |
③体制の整備 |
・組織横断型の体制にし、全体で取り組む ・他の自治体とも連携する |
自治体DXの代表的な取り組み例は、次の通りです。
・行政手続きのオンライン化
・情報システムの刷新
・職員のテレワーク推進
・オープンデータの推進
ここでは、各取り組みについて解説します。
行政手続きのオンライン化(電子申請)
行政手続きのオンライン化は、住民にとってメリットが大きいだけでなく、自治体の業務効率化も望めるため、優先して取り組むべき事項です。
電子申請が可能になれば、仕事・育児・介護などで忙しい住民も、窓口に出向く手間を省いて手続きができます。来庁者が減れば、窓口対応業務を効率化することもできるでしょう。
情報システムの刷新
役所内のシステムを共通仕様のシステム「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」へ移行することもおすすめです。年金や健康保険・税関係などの基幹システムを共通仕様に刷新することで、自治体間のデータ連携がスムーズに行えるようになります。
手続きの簡略化やオンライン化も進み、住民・自治体双方で効率化が図れるでしょう。
職員のテレワーク推進
行政手続きのオンライン化や情報システムの刷新が進めば、職員のテレワークを今以上に推進することができます。
テレワークを推進する際は、次のような流れで進めると良いでしょう。
全庁的な体制や環境を整える
小規模に試行する
試行結果を検証し、課題の整理・テレワーク移行の範囲や方法の検討をする
本格実施後も定期的に見直しを行う
オープンデータの促進
オープンデータとは、一定のルールの下で誰もが自由に利用・加工できるデータのことです。自治体の公開する統計データなどが該当します。
オープンデータを推進し社会全体で共有するデータを増やすことで、経済の発展につながったり、自治体の課題解決の糸口がみつかったりするなどのメリットがあります。
住民や民間企業のニーズを把握し、効率的に公表していくことがポイントです。
自治体DXは、ICT技術を活用し、行政サービスの向上や業務効率化を図る取り組みです。少子高齢化による労働人口の減少や、レガシーシステム刷新の要請などを背景に、推進が求められています。
自治体DXを成功させるには、適切な人材やポイントを押さえた計画を準備することが欠かせません。また、組織内はもちろん、他の自治体とも連携し、サービスの充実を第一に取り組む必要があるでしょう。
・DX人材とは?人材採用と育成の課題・対策・育成モデルを紹介
・社内DXとは?社内DX推進が必要な理由と成功のポイント
【参考(外部サイト)】
自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画|総務省
DX白書2021_第3部_デジタル時代の人材|情報処理推進機構(IPA)
自治体がDXを進めるための2ステップ |4つのポイントと3つの成功事例も紹介|AINOW
自治体DXとは?推進のポイントと行政の取り組み事例を紹介|たぷるとぽちっと