ITトピックス
2023.03.31
「DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル変革)」に関連するキーワードとして、「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」という言葉をメディアで目にする機会が増えています。
新型コロナウイルス感染症の流行や国際情勢の大きな変化・地球環境の変動など、不確定要素に事欠かない現在、SXについて理解し経営に取り入れることは、すべての企業にとって欠かせません。
そこで今回は、DXへ取り組む企業の多くが注目しているSXとは何か、DXとの違いは何かといった点について、ポイントを絞って簡潔に解説していきます。
「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」とは「持続可能な変革」を意味し、企業の持続可能性とESGの両立を図る経営指針のことを指します。
なお、ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の総称で、企業へ投資する際などに参考として用いられる指標です。環境や社会の問題解決への貢献度や、不祥事などのリスクを回避できる運営がされているかどうかが、企業経営の安定性に影響すると考えられています。
企業や社会を取り巻く環境の変化が大きく、将来の予測が難しい「VUCAの時代」と呼ばれる現代において、やり方をただ変えるのではなく、企業の経営も社会も中長期的に安定して持続可能な形で変革するための1つの指針が、SXと言えるでしょう。
VUCA(ブーカ)とは、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧製(Ambiguity)という4つの単語の頭文字を取った言葉です。元は1990年代に軍事用語として使われ始めた言葉でしたが、2010年頃からビジネス分野においても、変化が激しく不安定な社会情勢を指す言葉として用いられるようになりました。
VUCAの時代に企業が生き残っていくためには、時代の流れに合った形で変革を起こし続けていくことが必要です。
SXは、経済産業省の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」中間とりまとめにおいて、経営環境の大きな変化やESGへの対応などに伴う課題の解決策として取り上げられました。
欧米と比較すると実践する企業はまだ多くはありませんが、SXに注目・着手する企業は日本でも着実に増えつつあります。
SXを実践する上で欠かせないのが、感知(センシング)・捕捉(シージング)・変容(トランスフォーミング)の3つの要素から成る、企業を変革するための能力であるダイナミックケイパビリティです。
ダイナミックケイパビリティの各要素は、次のようなことを意味します。
ダイナミックケイパビリティの3要素とは
感知(センシング):顧客ニーズや環境の動向を分析し、変化の兆しに気付くこと
捕捉(シージング):すでに保有している資産や知識・技術などを活用して、変化に対応した競争力を獲得すること
変容(トランスフォーミング):生み出した競争力を有効活用できるように、組織全体を作り変えること
以上のとおり、ダイナミックケイパビリティは、日ごろから販売状況や市場などのデータを分析することで企業を取り巻く環境の変化を敏感に察知し、柔軟に対応していく能力のことです。
企業がこのダイナミックケイパビリティを備えるためには、DXが欠かせません。感知に欠かせない多数のデータの収集・分析は、デジタルツールを活用することでより効率的に行うことができますし、AI予測を利用することで捕捉の過程をより効果的に行うことができるからです。
企業が安定的に経営を続けるうえでの生存戦略としてSXが必要である主な理由は、次の3つです。
企業の生存戦略としてSXが必要な3つの理由
社会の不確実性:新型コロナウイルス感染症 / 国際情勢の大きな変化 / 地球環境の変動などに伴い、ビジネス環境の不確実性が高まっている
⇒ SXを取り入れることで、変化に即応し継続して収益を上げることのできる体制が整う
コモディティ化:技術水準の高まりやグローバル化に伴い、コモディティ化しやすくなっている
⇒ SXによって、既存の製品・サービスを価格競争に陥らずに販売できる価値の創造が可能
ESG投資の拡大変容:投資先の選定時にはESGが重視されるものの、経営利益との両立が難しい場合がある
⇒ SXの指針に基づき変革することで、ESGと企業競争力の両立ができる
このように、企業が社会の不確実性やSDGsへの適応が求められる中でも、企業の価値・競争力を維持するうえで、SXは欠かせません。
DXとSXはどちらも、企業が生き残っていくための変革である点では同じです。ただし、DXは現在のあり方を変革し、競争力を早期に獲得することを目的とするのに対し、SXはDXにESGの視点を加え、中長期的な経営安定化を目指す点が異なります。
DXを戦略的に積み上げた先にSXが実現するとも言え、両者は相反するものではなく、どちらかだけに取り組めば良いというわけではないことに注意が必要です。
具体的には、「DXによって業務課題が解決し、結果的に社会課題の解決に寄与する」「SXの実現にはデジタル技術が不可欠」という双方向的な関係性にあります。
2つの視点を組み合わせて戦略・施策を考え、並行して変革を進めるのが最良の方法です。
「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」とは、企業の持続可能性とESGの両立を図る経営指針のことです。世界的なパンデミックやグローバル化・環境問題など不確実性の高まりの中で、社会的な企業価値を創造し、安定して経営を継続する必要性から注目を集めています。
企業や事業の「変革=トランスフォーメーション」は、企業存続の重要なカギとなります。変革の目標設定の指針として、DXだけではなくSXの観点を持つことが今後必須となっていくことでしょう。
DXやSXへの取り組み開始や強化をご検討の方は、弊社のDXとサステナビリティへの取り組みについてぜひご一読ください。
【参考(外部サイト)】
「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」中間取りまとめを行いました|経済産業省
《徹底解説》SXとは|DXとの違いやESGとの関係性まで徹底網羅|SDGs CONNECT
SXとは?注目される理由や実践事例、DXとの違いを解説|NEC
VUCAの時代を生き抜く企業に求められるサステナブルなDX|日経XTECH