海外労務管理のポイントとは?給与や保険など海外赴任規定の記載事項を解説
海外に拠点を構える企業にとって、海外赴任者の労務管理は必須知識です。では、実際に海外労務管理を行う際はどのようなポイントに注意しておくと良いのでしょうか。
今回は、海外赴任規定に記載すべき内容を中心に要点をまとめました。
海外労務管理とは
海外拠点では、現地スタッフも雇用することがありますが、日本から人員を送り出す(海外赴任)ケースもあります。
海外赴任者の労務管理は、国内の一般的な労務管理とは異なる点が多く、特有の注意点があります。
例えば、赴任先の国によっては、各地の労働法に従った労務管理が求められます。特に給与関連や税金関連は重要な項目であり、事前に注意点を把握しておくべきでしょう。
海外赴任規定(就業規則)に記載しておきたいこと
海外労務管理を進める上で、まずは海外赴任規定を整備しておくことが必要です。海外赴任規定に記載しておくべき項目として、主に以下のようなものがあります。
・海外赴任期間
・給与、手当、賞与
・労働時間および休日
・社会保険
・税金
・赴任前の予防接種・語学研修等の費用負担・一時帰国の頻度
・着任時・一時帰国時の費用負担
・健康診断・受診の頻度・費用負担
・帯同家族に関すること
など
上記項目の中で特に重要なものについて、規定整備にあたり理解しておきたいポイントについて解説します。
【海外赴任規定のポイント1】給与設計・規定
海外赴任者の給与は「グロスアップ計算」で算出するのが一般的です。先に手取り額を決定し、その手取り額から社会保険料、所得税を逆算し、総支給額を算出する方法です。
また、グロスアップ計算で算出する場合に注意したいのが社会保険料です。日本と社会保障協定が発効されている世界22カ国(2022年12月現在)では日本の分のみ控除となりますが、協定が結ばれていない国は日本に加え、赴任先の社会保障制度にも加入することが原則です。つまり、社会保険料を二重に負担することになります。
この他、海外赴任者における賃金の考え方については以下のページをご参照ください。
海外赴任者に対する賃金の考え方
【海外赴任規定のポイント2】健康保険・公的年金(厚生年金保険)
健康保険と公的年金(厚生年金保険)については、赴任する海外拠点の形態や給与支払い元によって継続の可否が異なります。
継続できるケース
健康保険や厚生年金保険は、一時的な海外出張の場合は変更ありません。
海外支店や駐在員事務所への赴任で、給与の全額、もしくは一部を日本の本社から支給する場合も、赴任前の健康保険や公的年金が継続されます。
ただし、海外の医療機関では、日本の健康保険被保険者証を利用することができません。医療機関にかかった場合は、いったん全額を自己負担で支払い、費用請求をする必要があります。
また、年金については、赴任先の国の老齢年金制度への加入を求められる場合もあります。二重負担となることを防ぐため、赴任期間が5年未満の場合に赴任国の年金加入が免除される「社会保障協定」を締結している国もあるため、適宜情報収集が必要です。
継続できないケース
海外の現地法人へ転籍する場合や、赴任先から給与が全額支給される場合は、どちらも被保険者資格を喪失します。喪失後は現地の健康保険制度の適用となりますが、国によっては健康保険制度がない場合もあります。この場合は、会社側で海外旅行保険を準備するのが一般的です。
【海外赴任規定のポイント3】介護保険
介護保険については、海外赴任に伴い住民票を除票する場合、介護保険の適用除外となり被保険者資格を失います。帰国後に再度日本で住民票の登録をすると、介護保険料の納付が再開されます。
健康保険・公的年金・介護保険などの社会保険制度に関しては、以下のページで詳しく解説しています。
海外赴任者の社会保険(健康保険、厚生年金保険)
【海外赴任規定のポイント4】税金(税申告)
海外赴任や海外出張で他国と日本を行き来する社員は、短期滞在者免税(183日ルール)と呼ばれる基準により、183日を超えていなければその国では免税となります。
短期滞在者免税は、同じ給与などに対して日本と滞在先の両国で課税されてしまうことを避けるために設定されたものです。短期滞在者免税の要件として、滞在日数基準、支払い基準、恒久的施設負担基準の3つがあります。
海外赴任者の183日カウント方法は、1年以上の期間を予定して出国した場合は日本の非居住者に該当するため、183日のカウントはせず滞在先の国のみで所得税を申告・納税します。
この他、税金・税申告に関して詳しくは以下ページをご参照ください。
海外赴任者の適切な税申告のために(短期滞在者免税について)
【海外赴任規定のポイント5】帯同家族
海外赴任者に配偶者や子どもがいる場合、家族を帯同するケースも多いでしょう。基本的には家族が帯同をするかどうかは海外赴任者本人が決定します。これまで家族帯同が原則としていた企業もありましたが、近年では各家庭の意思を尊重する形に変わってきています。
家族を帯同するメリットは、海外赴任者にとっては生活面・精神面のサポートを家族から受けられることです。企業にとっては海外赴任者の心身を維持できることは大きなメリットでしょう。
帯同のデメリットとしては、帯同家族が言語や文化、気候等の環境によってストレスを受け、不安定になる恐れがあることがまず挙げられます。企業にとっては、家族が帯同することで発生する諸手続きの負荷がかかることが懸念点となるでしょう。
海外赴任者の家族が帯同する場合は、「帯同家族手当」を支給します。企業によっては海外基本給に含めているとして、別途支給しないこともあります。この他に、就学中の子どもが帯同する場合は「子女教育手当」、帯同せずに単身赴任となる場合には「単身赴任手当・留守宅手当」が支給されるケースがあります。
帯同家族に関して、詳しくは以下のページをご参照ください。
海外赴任者の家族帯同のメリットや是非、帯同手当などについて解説
煩雑な海外労務を円滑にする「AGAVE」
海外に拠点を持つ場合には、その土地の法律に準じた労務管理が求められます。特に複数の海外拠点を持つ場合は、海外労務管理業務は煩雑化することが想定されます。
書面やExcel・スプレッドシートなどで管理すると、どのような手続きが必要なのか、どこまで手続きをしたのかなど混乱してしまうこともあります。
海外労務に特化したクラウドサービス「AGAVE」は、赴任前・赴任中・帰任までの海外労務に関するタスクを管理し、対応漏れなどのミスを未然に防ぐことが可能です。
利用企業数100社以上、利用地域は60カ国にのぼり、多くの企業様にご活用いただいているサービスです。海外給与の税制など、各国に異なる対応も個人ごとで把握、一元的に管理ができます。
海外赴任に関する人事部門の業務煩雑化を抑え、効率化を図りましょう。
参考:
「海外進出の際に必要とされる労務管理とは」 X-HUB TOKYO|東京都・デロイトトーマツ・JETRO
https://x-hub.tokyo/column/kaigai-sinsyutu/271.html 2022年12月28日
「国際(海外)労務の基礎知識 | 国際労務で注意すべきポイント、海外勤務規定に記載すべき事項とは?」 Digima〜出島〜 | 株式会社Resorz
https://www.digima-japan.com/knowhow/world/19383.php 2022年12月28日
「海外在住者と日本の医療保険,年金」外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/kaigai/nenkin_hoken/index.html 2022年12月28日
「社会保障協定」日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/20141125.html 2022年12月28日
- カテゴリ:
- Agave
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- 海外人事のトピック
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