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海外赴任者の社会保険(健康保険、厚生年金保険)

 2018.10.29 サークレイス株式会社

こちらのブログでは、海外人事業務を行うに当たって、駐在員管理などの特殊性を把握し、海外人事業務を円滑に実施するためのエッセンスの一部をコラムとしてまとめています。
今回は「海外人事における賃金の考え方について」ご説明します。

はじめに

健康保険や厚生年金保険は、海外出張の場合、原則として何ら変更されることなくそのまま被保険者資 格が継続されますが、海外法人に赴任し転籍となる場合や、報酬の全額が海外赴任先から支給される場合 は、被保険者資格は喪失することになります。

健康保険の被保険者資格を喪失したら

海外の現地法人に転籍となった場合は、日本の会社の健康保険制度は被保険者資格を喪失して、現地 の健康保険制度の適用を受けることになります。

しかし、そうした健康保険制度がない国や医療制度や保険市場が未成熟な東南アジア地域へ赴任する場 合には、会社が海外旅行保険を用意するのが一般的です。

本来は、海外旅行者向けに現地での事故や病気、ケガを保障するために開発された保険商品ですが、補 償期間を⻑くして補償内容も充実させ、海外赴任者向けにアレンジした形で各保険会社が取り扱っていま す。ただし、⻭科については対象外となっています。

なお、健康保険の資格を喪失してから 20 日以内に手続きをすることで、引き続き 2 年間、任意継続被 保険者となることができ、療養費の請求を行うことができます。

被保険者資格が継続できる場合

日本の会社から報酬を受けることができる場合は、赴任先の健康保険被保険者資格は継続されます。被 保険者資格が存続しているわけですから、海外赴任者は当然のことながら日本国内と同様の保険給付が受 けられます。

ただし、海外の医療機関の窓口では健康保険被保険者証は利用できないため、医療費の全額をいったん 支払い、診療報酬明細書や領収明細書等を受け取り、それらの日本語翻訳文を添付して改めて健康保険 組合や全国健康保険協会に対して療養費の請求を行います。なお、当然のことながら、自己負担額は控除されますから、全額が払い戻されるわけではありません。

また、海外療養費の支給対象は、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。その ため、美容整形やインプラントなど、日本国内で保険適用となっていない医療行為や薬が処方された場合は、 給付の対象にはならないので注意しましょう。

介護保険の適用除外

日本国内に住所を有する 40 歳以上の人は介護保険の被保険者となり、40 歳以上 65 歳未満の労働 者は介護保険料が給与から控除されています。

しかし、国内に居住していることが介護保険の要件ですから、海外赴任のため日本に住所を有しなくなった 場合は、その翌日に介護保険の被保険者資格を喪失することになります。

したがって、40 歳以上の被保険者が海外赴任する場合は「介護保険適用除外等該当届」を提出するこ とで、介護保険料の納付が不要になります。

社会保障協定とは何か

海外赴任する場合、日本の社会保険制度の被保険者資格を有したまま、赴任国でもその国の社会保険 制度の被保険者要件を満たしてしまい、保険料の二重負担を余儀なくされることがあります。

とりわけ公的年金制度では、日本に限らず赴任国においても老齢年金の受給資格要件のひとつとして、一 定期間の公的年金制度への加入を求められる場合があります。しかし、赴任国でわずかな期間だけ赴任して その国の公的年金制度に加入したとしても、老齢年金の受給資格要件を満たすことはできず、赴任国で負担 した保険料が掛け捨てになることもあります。

こうした日本と赴任国での年金・医療保険制度への二重加入問題や公的年金制度の加入要件問題を 解決するために、相互国間で締結するのが社会保障協定です。

社会保障協定は、以下の 2 つを主な内容としています。

1.適用調整
赴任国への派遣の期間が 5 年を超えない見込みの場合には、その期間中は赴任国の法令の適用を 免除して自国の法令のみを適用し、5 年を超える見込みの場合には、赴任国の法令のみを適用する。

2. 保険期間の通算 両国間の年金制度への加入期間を通算して、年金を受給するために最低必要とされる期間以上で あれば、それぞれの国の制度への加入期間に応じた年金が、それぞれの国の制度から受けられるように なる。

なお、2018 年 9 月現在、社会保障協定を発効済みの国は 18 か国です。

会社と個人情報を共有することを忘れない

赴任中に、被扶養者に異動があったり、住所が変わることもあるでしょう。そういった情報は、常に最新の状 態で会社と共有されていなくては、必要な手続きが漏れてしまう恐れがあります。うっかり忘れてしまいがちです が、赴任中も個人情報は常に最新の状態にしておきましょう

本コラムは海外人事に強い HR プラス社会保険労務士法人と、海外駐在員管理のクラウドサービス “AGAVE”を提供するパソナテキーラの共同作成したコラムです。