Agave
2023.01.05
このブログは、海外人事業務を行うに当たって、駐在員管理などの特殊性を把握し、海外人事業務を円滑に実施するためのエッセンスの一部をコラムとしてまとめています。
今回は、「海外赴任者特有の手当」について、ご説明します。
海外赴任者に対しては、国内勤務時の給与の手取額を保障した上で、赴任手当や家族帯同手当などの 手当を設定することが一般的です。それでは、どのような手当を支給するのか、確認していきましょう。
購買力補償方式(「海外赴任者に対する賃金の考え方」をご参照ください。)を採用した場合、海外で 支給される基本給は、原則として赴任地での生活に必要な水準にとどまることから、海外赴任手当(海外勤 務手当)を付加することが一般的です。海外赴任手当は、慣れない異国の地での生活や商習慣の違い等 によるストレスへの補填として支給されます。
ただし、海外赴任者だから、という理由だけでなく、海外でしっかり頑張ってほしいというインセンティブ目的で あることを明確にしておきたいところです。
海外赴任手当は、海外での基本給や諸手当がおおむね決まったところで決定し、付加されることが少なくあ りません。奨励的な意味合いのほかに、時間外労働の見合いとして支給する場合もあるなど賃金額の調整弁 でもあるのです。
また、手当額は基本となる賃金月額をベースに一定乗率を掛けて求めるケースも多く、定額とする場合で も、家族帯同と単身赴任の場合で手当額に差を設けることもあります。
一部では、海外赴任自体が赴任者のキャリア形成につながるわけだから海外赴任手当をわざわざ支給する ことはない、とする意見もありますが、異国の地でストレスを抱えながら業務にあたる負担を考慮すれば海外赴 任手当は支給すべきものと言えるでしょう。
ハードシップ手当は、赴任地の治安、気候、食生活などの生活環境の違いから受ける精神的・身体的負 担を補填するために支給される生活条件格差等補填手当です。
東南アジアはこれまでハードシップ手当の支給対象とされてきましたが、都市の生活環境は激変しており、単に「東南アジアだから」という安易な発想で付加するべきではないでしょう。
手当額は、コンサルティング会社が提供している都市別ハードシップスコアといった指数を乗じて算出すること もありますが、定額で支給するケースが多くみられます。定額であっても、家族帯同の有無で差をつける場合 や、赴任期間が⻑くなるにつれ金額を低減させていくケースもあります。
海外赴任の場合、日本では一般職なのに海外では管理職となる、あるいは日本では管理職なのに海外で は現地法人の取締役になる、ということがよくあります。また、現地企業との交渉のために役職者にすることもあ れば、ローカルスタッフに対するマネジメントをやりやすくするために役職を付ける場合もあります。
そこで、海外における役職について、現地役職手当を支給することがあります。手当額は、定額で支給する ケースが多くみられますが、現地での職務と責任の程度に応じて決定されます。
単身赴任手当(残留家族手当、留守宅手当)は、家族を日本に残して海外に赴任する社員に対して 支給される手当です。配偶者や扶養家族を国内に残して海外赴任すれば、二重生活となって住宅費や生 活費などが上昇しますので、そのコストの補填、そして家族との別居に対する心身ストレスを慰労する意味を込めて支給されます。
子女教育手当は、赴任地に帯同した子女の教育費を会社が負担するものです。
国内の場合、教育に対する補助はほとんど見られませんが、海外の場合においては、子女を受け入れられる 学校が限られるため、最低限必要となる費用を除いて補助を行うことが一般的です。
手当額としては、実費の全額を会社が負担する方法と、一定額または一定率を乗じて得た額を負担する 方法があります。また、日本人学校に通学する場合だけ当該費用を支払う場合もありますし、インターナショナ ルスクールや私立学校を含めて実費の全額または一部を支払うケースもあります。
海外赴任の場合、現地の労働法が適用されるため、日本の労働基準法は適用されません。
しかし、たとえばベトナムでは法定労働時間が 1 週 48 時間であるなど、東南アジアでは日本よりも休日が少なく労働時間が⻑くなる傾向があります。
また、ローカルスタッフのマネジメントに手を焼いたり、娯楽が少ないために休日に暇を持て余し結局は仕事をしてしまう赴任者もいます。
これを考えあわせれば、等級や役職に応じて一定額を時間外労働手当として支給することは妥当だと考えられます。
本コラムは海外人事に強い HR プラス社会保険労務士法人と、海外駐在員管理のクラウドサービス“AGAVE”を提供するパソナテキーラの共同作成したコラムとなります。