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海外赴任中の安全配慮義務

 2018.10.29 サークレイス株式会社

はじめに

海外赴任者は、気候・文化・言語の違いなどにより、不慣れな環境の中で多くのストレスを抱えながら、業務に従事することになります。それに伴って、日本では考えられないような様々なリスクと隣り合わせになることも あり、海外赴任者としても企業としても留意すべき点が多くあります。

安全配慮義務を負うのは誰か

労働契約法第 5 条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とされており、企業に対して安全配慮義務を課し ています。

在籍出向という形態で海外赴任させる場合、第一次的には、現実的に労務提供がなされる現地出向先 企業が安全配慮義務を負うことになります。しかし、在籍出向は、出向者は出向元と出向先の双方と労働契 約関係が生じ、安全配慮義務も、労働契約に付随する義務であるため出向元も当然に安全配慮義務を負 うことになります。

現地企業である出向先が、万全な安全配慮義務を履行しているとは限りません。日本の出向元としては 自社の社員をたまたま海外法人で就労させているにすぎず、日本で勤務する従業員と何ら変わらないわけで すから、出向元としては海外赴任者の生命や健康の安全に配慮することはむしろ当然のことと解するべきでしょ う。

安全配慮義務とは具体的に何を指すのか

【物的施設・機械等を整備する義務】

海外赴任者が赴任先、出張先で過ごす住宅、宿泊先あるいは就労場所である建物の安全対策を適切 に行うことが必要です。

建物への出入りの管理、警備員の配置、防犯カメラ、非常ベルなどのインフラに加え、住居や就労場所への 通勤、子女の通学の安全管理をチェックすることが大切です。事件、事故が起こる危険性が客観的に予測し 得るときは、即時に対策を講じなくてはなりません。

【安全等を確保するための人的管理を適切に行う義務】

赴任先周辺地域の情報を収集して分析し、それを赴任者に周知することが必要です。

この情報は、日本で取得することができるものに限界があります。日本人会や JETRO など現地のネットワーク等から得られる情報は非常に重要なので、会社としても積極的にそうした情報ソースと接点を持っていくことが 必要でしょう。

【労働者の健康について配慮する義務】

海外赴任は、不慣れな土地で生活を送り、日本語の通じにくい環境で就労するわけですから、それだけで 相応のストレスがかかるものです。赴任者の就労状況、健康状態を常に把握し、大事に至る前に対処するこ とが重要です。

赴任者本人も安全に努める

このように、企業には海外赴任者に対する安全配慮義務が課せられますが、赴任者本人も企業に依存するのではなく、自分と家族の安全を自分たち全員で守るという意識を持つことが必要です。

外務省が公表している「海外赴任者のための安全対策小読本」では、「安全対策の基本的心構え」として 以下をあげています。

1. 自分と家族の安全は自分たち全員で守る
2. 予防が最良の危機管理
3. 悲観的に準備し,楽観的に行動する
4. 安全のための三原則の順守:目立たない、行動を予知されない、用心を怠らない

5.  住居の安全確保
6.  現地社会に溶け込む
7.  精神衛生と健康管理に留意
https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_08.html 

なお、この小読本には安全対策のためのチェックリストも掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

本コラムは海外人事に強い HR プラス社会保険労務士法人と、海外駐在員管理のクラウドサービス “AGAVE”を提供するパソナテキーラの共同作成したコラムです。