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CRMとSFAの違い

 2018.03.22 Pasona Tquila

一口に「顧客を管理する」といっても、実は2通りの管理方法があります。それが、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)での管理とSFA(セールス・フォース・オートメーション)での管理です。

前者は「顧客関係管理」のことで、CRMシステムは主に顧客情報の集約と紐づけ、組織的な情報共有などの役割を持ちます。顧客情報は、企業と顧客のすべての接点における情報です。この接点は、営業やサポート・保守部門、コールセンター、Eコマースなど多岐に渡ります。これらで得られた情報のすべてを管理するということです。後者は「営業支援」のことで、SFAシステムは顧客情報を管理しつつ営業活動を効率化するというのが主な役割です。よって、SFAで管理される顧客情報は、自ずと営業活動に紐付くものになります。

しかし最近では、CRMとSFAを曖昧に理解したままシステム導入を行ってしまい、失敗するケースが少なくありません。

そこで本稿では、CRMとSFAの違いを具体的に解説し、皆さんの適切なITシステム導入を支援したいと思います。

CRMとSFAは、顧客管理の目的が違う

従来の顧客データベースを捨てて、ITシステムによる適切な顧客管理を実現したいという企業が増えています。しかし、先述の通り顧客管理にはCRMとSFAの2通りがあり、どこに重心を置いて利用したいかによって導入すべきものが異なります。

まず、CRMによる顧客管理の目的は「顧客満足度向上(ロイヤリティ、LTV向上)」と「企業収益拡大」です。具体的にどう顧客満足度を向上するかというと、それは「One to Oneマーケティング」の実現にあります。

One to Oneマーケティングとは顧客一人ひとりに適した、異なるマーケティングやセールス、あるいはサービスやケアを実施することで顧客ロイヤリティ(愛着や忠誠心の意)を高めるための取り組みです。

現代経済は、「高品質」や「低価格」といった商品力だけではモノが売れない時代です。消費者はPCやスマートフォンを使ってインターネットに接続し、自身で情報収集した上で購入するものを選択するため、ただ「安い、品質が良い」だけでは売れなくなってしまっているのです。

大切なのは顧客の商習慣や経営課題を十分に理解した上で、適切なタイミングで顧客にコンタクトを取り、最適な商品やサービスを提案することです。言い換えれば「顧客が欲しいときに欲しいものを売る力」とも言えましょう。

これを実現するのがOne to Oneマーケティングです。CRMによってOne to Oneマーケティングを展開することで顧客満足度向上などにもつながります。

一方SFAで顧客管理を行う目的は、「営業活動効率化」と「組織的なセールス戦略」です。SFAは営業支援という名称の通り、営業活動やToDoの管理機能や案件管理機能など、営業活動を漏れなく効率的に行うための機能が多数備わっています。

さらに組織的なセールス戦略というのも重要な目的です。従来の営業スタイルでは営業担当者ごとに情報が属人化し、競うように案件を追うという姿が垣間見られました。しかし時代は変わり、組織的にセールス活動を行う企業でなければ、継続的な顧客獲得は難しくなってきたのです。

SFAがあれば営業担当者自身の行動履歴や顧客情報は一箇所に集約され、営業部全体での共有が可能です。情報集約により上長は効率良く営業の進捗管理を行えるようになります。一説には、そもそもSFAの生い立ちは「営業担当者が持つ情報を属人化させずに管理させるため」だという意見もあります。

以上のように、CRMとSFAは顧客管理のそもそもの目的が違うため、明確な線引きがあります。ただし、最近ではSFA領域をカバーしたCRMというのも登場しているので、製品によって若干定義が異なるということもご理解ください。

CRM/SFAで、できること、できないこと

顧客管理の目的が違えば、CRMとSFAとでは備えている機能も違います。ここでは、CRMとSFAのできること、できないことをまとめました。CRMとSFAの機能の違いを理解して、自社にとって本当に必要な顧客管理とは何かを考えましょう。

CRMのカバー領域

  • 顧客情報管理(基本情報に加えて担当者や決裁者氏名、購入履歴など)
  • イベントおよびセミナー開催に向けた機能(フォーム作成など)
  • 顧客への満足度調査(WEBアンケートなど)
  • フォロー、クロスセルを目的としてメール配信
  • 見込み客育成のためのマーケティング機能(シナリオメールによる成熟)

このようにCRMでは、顧客情報の管理と見込み客の創出など、やはり顧客との「関係」を管理するところに重点を置いています。反対に、SFAのような営業活動効率を高めるような機能は備わっていません。

SFAのカバー領域

  • 顧客情報管理(基本情報に加えて担当者氏名や決裁者氏名、購入履歴、案件内容や商談内容など)
  • 部署内で共有可能なToDo機能およびアラート機能
  • スケジュール機能による予定の管理および共有
  • 顧客情報と紐づけた見積書作成機能
  • 請求書発行機能
  • 日報管理機能

SFAでは営業活動の効率化に重点を置いているため、イベントやセミナー開催向けの機能やマーケティング機能を備えていないのが一般的です。そのため、マーケティングとの連携を図る際は、別途CRMやマーケティングツールの導入が必要になります。

正しい顧客管理システムを選ぶために

ITシステムによって顧客管理を徹底し、その効果を得たいと考えた場合、まず「何を目的とするか」を改めて整理することが大切です。ここまで解説しように、CRMとSFAには明確に違いにより、顧客管理の目的によって適切なシステムが異なります。もちろん、中にはCRMとSFAを統合したような製品もあるため、尚のこと目的の整理が大切になります。

そこで、ITシステムで顧客管理を実施する目的を整理するにあたって、顧客管理に関する社内課題を洗い出してみてください。課題を一つひとつ浮上させてみると、意外な気づきがあったります。

絶対にしてはならないのが、「営業力を強化したいから我が社に必要な顧客管理はSFAだ!」と、事実にもとづいた判断をしないことです。経営者や役員が考える経営課題と、実際に現場で発生している課題とでは大きなギャップが多々あります。従って、必ず顧客管理に関する課題を洗い出した上で、改めてITシステムで顧客管理を実施する目的を明確にし、CRMとSFAあるいは両方を備えたITシステムのいずれが最適かを見極めます。

システム導入は終わりではなく、始まり

少々かっこつけた小見出しですがこれは紛れもない事実であり、CRMやSFAを導入する企業の中にはシステム導入自体が目的になってしまっているケースが少なくありません。CRMもSFAも決して簡単に導入できるものではないため、次第にシステム導入自体が目的に変わってしまって、その後の運用を考慮できていないのです。

こうしたケースでは十中八九、システムの定着化に大変苦労します。あるいは、システムがまったく定着せず、失敗に陥るケースも。

従ってCRMにせよSFAにせよ、あるいは統合型のシステムにせよ、何よりも大切なことは導入後の運用です。どんなに自社に適した製品を導入しても、中長期的な運用計画が予め作られていなければ、失敗に陥る確率は各段に上がってしまいます。

CRMとSFAの違いを明確に理解し、どちらの自社にとって最適な顧客管理なのかの決断を下したら、急いで製品選定や導入に踏み切るのではなく、一度導入後の運用についてイメージしましょう。そうすることで、システムの迅速の定着化と、本当に導入効果の高いCRMおよびSFA活用がスタートします。

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