導入事例
ヤマハ株式会社 様
ご利用サービス:
Salesforceコンサルティング、開発・導入支援
SalesforceによるグローバルFAQシステムで「顧客ともっとつながる」
ワンソースのコンテンツを全世界17販社・12言語での展開に成功
ヤマハ株式会社
事業内容 | 楽器事業、音響機器事業、その他の事業(電子部品事業、自動車用内装部品事業、FA機器事業、ゴルフ用品事業、リゾート事業 等) |
URL | https://www.yamaha.com/ja/ |
世界最大の総合楽器メーカーであるヤマハ株式会社様は、楽器、音響機器、部品・装置など多岐にわたる事業を展開。楽器事業では、ピアノ、管弦打楽器、ギターなどの製造で世界的な地位を占め、初心者からプロフェッショナルまで音楽愛好者を魅了する高品質な楽器を提供し、高い評価を得ている。音響機器事業ではホームオーディオ機器から業務用音響機器まで幅広く提供しており、多彩な音響環境での信頼を得ている。このほか電子デバイスや、自動車用内装部品なども手がけ、幅広い分野で世界的な評価を受けている。
課題・背景
- 「顧客ともっとつながる」ためにグローバルなFAQの情報発信が必要だが、5販社でしか提供できていない(全19販社のうち)
- 5販社のFAQはシステムやコンテンツがバラバラで業務の重複があり、運用が非効率で顧客への情報発信が不充分
- 顧客データやフィードバックを集めてサービスや製品の改善につなげる基盤が不足
成果・効果
- グローバル全販社が “One Yamaha” となり "1ソース・マルチサイト・マルチ言語展開" が実現
- 1コンテンツを制作すると、世界中の販社サイトで多言語による共通の情報公開が可能に
システム運用費用が日本だけでも約6割軽減 - FAQ基盤構築により製品改善やサービス改善につながる礎ができた
サークレイスのSalesforceコンサルティングチームが、ヤマハ株式会社の「新FAQシステム構築」についてご相談を頂いたのが2020年の暮。中期経営計画の「より優れた顧客体験の創出とグローバルに一貫性のある情報発信を実現する」という点において、「お客さまと さらに深く・長く・広く繋がるサービスの提供を目指す」ことを目的とした「グローバルFAQサイト構築プロジェクト」が始まったのが 2021年2月。非常にチャレンジングな取り組みであった「新グローバルFAQシステム」の構築とサイト公開までの道のり、その効果と今後の展望について聞きました。
課題・背景
「顧客ともっとつながる」ため、
世界の販社に向けて統一したFAQサイトを構築する
当時、どのような課題を抱えていたのでしょうか。新FAQサイト構築への経緯や課題は?
ヤマハ株式会社(以降、ヤマハ)は、世界最大の総合楽器メーカーとして、また音響機器メーカーとして、国際的に事業展開している。子会社数は63社(うち連結対象58社)、連結従業員数は2万人におよぶ。
ヤマハが2022年に発表した中期経営計画「Make Waves 2.0」では、その中の重点テーマの一つとして「顧客ともっとつながる」を掲げている。その一つの施策として、お客様が抱く様々な疑問やお困りごとに寄り添った記事を提供するFAQ(よくあるお問い合わせ https://faq.yamaha.com/s/ )サイトの基盤構築に着手した。
それまでFAQサイトは、19か国・地域の販売会社(販社)があるうち、5販社で個別に運用されているのみで、その他地域の14販社では、FAQサイト自体が作られていなかった。
しかもそれぞれの販社で独自にFAQサイトが構築されていたため、システムも形式も、内容も言語も統一されていなかった。
須賀様 「販社ごとに内容もバラバラで統一感もなく、またそれぞれ異なるシステムで運用しているので、管理する費用や運用工数でも販社に非常に大きな負担がかかっていました」と当時を振り返る。
これを改めて、日本のヤマハ本社主導によりグローバルにFAQを展開し、共通のシステム上で同じ内容を各言語に翻訳して公開する、質の高いFAQサイトを整備していくことになった。
さらに、FAQサイトを活用して問題が解決したかどうかといったフィードバックや、製品に対する要望などの顧客の声を受け取り、情報提供サービスや製品改善に活かしていくことも目指した。
選定のポイント
Salesforce開発時にコンサルティングと構築を依頼し信頼感
3か月のプロトタイプ実行でFit&Gap分析し、
新FAQサイト構築に Salesforceが適していると判断
サークレイスのコンサルティングサービスを選定された理由と、Salesforceを新FAQのプラットフォームとして選定された決め手は?
サークレイスには、元々ヤマハの他部門が使用するSalesforce組織の統合・再構築プロジェクトで、コンサルティングと開発を依頼した経緯があり、当時から信頼感を持っていた。そのつながりから、新FAQサイト構築について相談したのがきっかけだった。
"1ソース・マルチサイト・マルチ言語" によるFAQ、このキーとなる課題に対して、サークレイスがSalesforce(Service Cloud × Experience Cloud)によるシステムを提案した。まずはFAQに関するヤマハの要件をSalesforceで実現できるかどうか、2021年1月から3月にかけてPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施。そのうち2月から3月の短期間で実際に動くシステムを開発し判断材料とした。
支援内容
Salesforceによるプロトタイピングで
FAQ基盤としての適合性検証とコンサルティング
1か国でのPoCを経て大規模構築・全世界展開へ
新FAQサイト開発の具体的な支援内容とプロジェクトの進行、全世界展開までの流れは?
このPoCでは、ヤマハへのコンサルティングをもとに作成したサービス要求書から、Salesforceの標準機能でできそうなところと、そのままでは実現できなさそうなところを洗い出す、フィット&ギャップ分析を行った。その検証結果を経て、サークレイスの開発によるSalesforceのシステムが適していると判断し、2021年4月から本格的な開発と検証を開始した。
新しいFAQでキーになるのが、1つのコンテンツを作成し、それを翻訳して複数の言語のコンテンツを複数のサイトに掲載するところだ。このプロセスも含め、グローバル共通のシステムにおいて、本社や販社の担当者がそれぞれ作業するための権限管理など、コンテンツ公開までの社内フローを含めて機能を検討することになった。
Salesforceの標準機能である "Salesforceナレッジ" をベースとした新しいFAQ基盤で、ギャップと分析されたものとしては、たとえばFAQの製品カテゴリーの階層構造があった。Salesforceではカテゴリーの階層構造の機能がなかったので、内部に階層を表す値を持たせることにより階層構造を実現するよう、サークレイスが追加開発した。
また、ヤマハの必要とする、記事コンテンツを公開するための承認機能についても、Salesforceの標準だけでは難しかったため、Chatter(チャットツール)を組み合わせるという方法で実現した。そのために、追加開発はもちろん、コンテンツのワークフローのありかたを含めて両社での検討が行われた。
これらの開発と検討は、主に両社による週に2回の定例ミーティングをもとに進められた。ただし、ちょうどコロナ禍の時期だったため、すべてがオンライン形式となった。会議にはWeb会議ツールを使い、日々の連絡はクラウド型プロジェクト管理ツールを用いてコミュニケーションを密にとった。
劉様 「サークレイスさんの対応にはとても助けられました。たとえば、こちらの考慮や要求仕様が抜け漏れていた点について、こちらの立場で気付いて提案してくださって何度も助かりました。
また、当社の社内用語などについて、サークレイスさん社内のプロジェクトメンバー用に「用語集」を作って共通言語でやりとりして下さるなど、ヤマハの社内事情にも合わせていただいて、コミュニケーションもやりやすかったです。
プロジェクトの最後のほうでは、プロジェクト管理ツールでチャットのように頻繁にコミュニケーションをとり、本番リリースに対応することができました」
成果・効果
世界中の販社で共通のFAQを公開し
そのデータを本社のダッシュボードで可視化
サービスや製品の改善につなげる
サークレイスの支援による成果・効果についてはどのようにお考えでしょうか?
こうして開発されたグローバルなFAQシステムは、まず2021年11月にインドネシア販社で本番リリース。その後、世界中に順次公開していき、2022年12月のブラジル販社をもって17販社のリリースが完了した。当時の移行記事数は主なものだけでも米国で6,000記事、日本で8,000記事、インドネシアで1,000記事に上った。
新しいFAQシステムにより、1つのコンテンツを作ると、それを翻訳して世界で17販社・20サイトに公開できるようになった。いままでFAQのなかった地域でも、販社の人手を大きくさくことなく、世界共通のFAQを公開できるようになった。
記事作成に参画している販社からも、直感的な編集や承認機能など、使いやすくなったという声が上がっている。販社によってはHTMLで直接コンテンツを作成していたところもあり、HTMLの知識がない人でもコンテンツ記事を書けるようになった。
システム運用費用も、たとえば日本の販社だけでも、約6割低減された。それがさらに、ほかの販社のシステムが共通化されることで、グローバルでは大きな費用削減となっている。
現在では、グローバルでのFAQ記事数は、移行したものも含めて約2万。新規構築したFAQのサイトにも関わらず、公開後の総ページビュー数は、2023年12月時点で約470万となった。
また、こうしたグローバルでのデータが簡単に取得できるようになったことも大きな効果となっている。世界の販社を横並びにし、どの販社のサイトアクセスが多く、そこに対してどういう属性の人が見ているかといったことが、ダッシュボード画面からビジュアルに確認できるようになった。
さらに、顧客のフィードバックもこれまでは、FAQで問題解決したかどうかをYes/Noで尋ねたり、総合の顧客満足度アンケートやフィードバックを取得していなかったり、販社によって運用が不揃いだった。これも共通の形式でアンケートをとり、本社からダッシュボードですべて集計できるように改善されている。
今後の展望
新たな顧客接点をグローバルに持てたことに大きな期待感
FAQシステムのリリースが完了しました。今後の展望についてお聞かせください。
ヤマハでは今後について、システム面では、社内のグローバルなコミュニティを作って、効果的な使い方などの情報交換を実施。ユーザーインターフェイスについても、たくさんある機能の中から販社で使う機能を使いやすくするなど、ユーザビリティ向上にも務めるという。
業務運用面では、新たな顧客接点をグローバルに持てたこと、顧客接点の情報を一元的に可視化して販社と本社で一緒にお客様をサポートできることに非常に大きな効果を感じている、と鈴木様は語る。
鈴木様 「これによって、他の行動データと合わせて何に関心があるのか分かったり、そこから最適な情報提供による顧客体験向上や製品販売戦略、製品/サービス改善などにも役立てさらには売上向上にもつなげたい。」
さらに、FAQシステムに利用したSalesforceの活用範囲を広げ、社内の他業務で利用されているSalesforce関連のシステムと連携させるなど積極的な活用をしていき、将来を見据えた長期的な視点での開発アドバイスや知見による提案についても、今後も期待しているという。
今後もこうしたことを実現していくにあたり、サークレイスへの期待は大きい。
須賀様 「今振り返っても、この開発は非常にチャレンジングなプロジェクトだったと思っています。
"1ソース・マルチサイト・マルチ言語"、承認ワークローのシステム基盤を構築し効率的な運用を確立しなければならないのは、かなり難しいことだったと思います。この厳しい要求に対して、真摯に要望を汲み取っていただき、最大限の努力で最後までやり遂げていただける非常に頼もしいパートナーでした。
今回、約2年間にわたる長期プロジェクトでFAQシステムを構築できたのは、サークレイスさんの支援のおかげだと思っています。FAQ観点では今後もユーザビリティ改善を進めつつ、他のSalesforce関連の多様な機能と連携を行いセールスに繋げる事ができれば非常に効果的だと考えています。
Salesforceという基盤を使ったメリットを最大限活かし、FAQから取得できる顧客接点の情報を活用し会社全体のビジネスに最大限貢献できればと考えています。
サークレイスさんからの提案やアドバイスを頂きながら、今後もまた何か新しいものに、できる限りチャレンジしていきたいと思っています。」と、須賀様はプロジェクト全体を振り返った。