AGAVE
2026.09.10

海外人事業務は、ビザ申請や給与計算、住居手配、健康管理など幅広く、社内外の関係者が数十人規模で関わることが多いため、どうしても複雑になりがちです。
担当者の異動や退職でノウハウが引き継がれにくく、結果として業務が属人化するため、改善が進まないまま時間が経ってしまうことも少なくありません。
こうした状況を受けてシステム導入、DX化を検討する企業は増えていますが、実際の現場においては「やり方をそのままデジタル化するだけ」では、改善が思うように進まないことが多いのが実情です。
海外人事業務には、担当者ごとに異なる運用や曖昧なルール、長年の慣習などが入り混じっており、まず土台となる業務そのものを整えないと、システムが十分に力を発揮できないからです。
そこでサークレイスが提供しているのが、AGAVE導入前に業務の可視化と整理を行い、業務をシステムに乗せられる形へ整える「海外人事DXコンサルティング」(以下、DXコンサル)です。現場の実態を丁寧に把握し、属人化した工程や曖昧なルールを明確にしながら、システム化に向けた設計図をおよそ3ヶ月で描いていきます。
今回は、海外人事業務の難しさや、その背景、そしてDXコンサルの詳細について、AGAVE事業部 海外人事DXコンサルタント 西本 浩氏に伺いました。
―海外人事業務のDX化が進みにくい背景をお聞かせください。
多くのお客様は、今の業務をそのままシステムに乗せることをDXだと捉えているため、業務の本質的な改善にまで手が回らないからだと考えられます。
例として、「今、この申請書には3人の承認印が必要です。だから、システム上でも一人ひとりが電子署名をつけ、同じように印影が見える仕組みにしてください」といったご要望をいただいたとします。
しかし、これは紙で行っていた承認業務を電子に置き換えようとしているだけであり、本質的な改善とは言えません。なぜ3人も必要なのか、その承認にどんな意味があるのかを問い直し、本来の目的を明確にすることが重要で、そのうえで業務を再設計して初めてDXといえます。
既存のやり方を変えることにはリスクや手間が伴うため、抵抗が生まれるのは当然です。だからこそ私たちは、お客様と一緒に業務を再設計し、「従来のやり方にシステムを合わせる」のではなく、「より効率的なシステムに業務を合わせていく」というマインドに切り替えていただけるまで、根気強く伴走します。
そのシステムがAGAVEであり、その前段階の業務整理と最適化がDXコンサルというわけです。

―まずAGAVEについて教えてください。
AGAVEは、駐在員管理に特化したツールです。約15年前、私がアメリカから帰国した際、日本企業の圧倒的なアナログ作業に衝撃を受けたことがサービスの原点です。
当時の日本企業では、駐在員管理のあらゆる工程がメールやExcel、紙の書類といったマニュアル作業で行われていました。海外人事は専門性が高い領域ですが、多くの企業では数年単位で担当者が入れ替わります。前任者のノウハウがブラックボックス化し、人が変わるたびに同じミスや手戻りが発生する。そんな現場の声を数多く耳にしてきました。
AGAVEは、そうした困りごとを一つずつ拾い上げ、機能として具現化してきたツールです。属人化した業務をシステムに集約することで、人が変わっても揺るがない土台、海外人事の強い柱を作ることを目指しています。
―DXコンサルのサービス内容を教えてください。
AGAVEの導入を前提に、現状の業務フローを整理・最適化し、システム化に不可欠な業務の明確化を支援するサービスです。
システム化において最大の障壁となるのはルールの曖昧さです。誰が、いつ、何の情報を、どこに、どの経路で渡すのか。こうしたプロセスが曖昧なままでは、どんなに優れたシステムを導入しても効果は半減します。
私たちは、お客様の現行業務を徹底的に理解し、不要な工程を削ぎ落として最適化する。システムという道具を最大限に活かすための精緻な設計図を描く役割を担っています。
―AGAVEはDXコンサルでどのような役割を担っているのでしょうか。
AGAVEは単なるツールではなく、コンサルのベースとなる存在です。AGAVEで実現できるベストプラクティスを念頭に置いているからこそ、迷いのない業務整理が可能になります。
一般的な業務コンサルは半年以上かかることも多いですが、私たちはAGAVEという道具を熟知しているため、そこから逆算して最短で設計図を描けます。
―このDXコンサルはどのような背景から生まれたのでしょうか。
海外人事に限らず、バックオフィス業務には以下の「詰まる・溜まる・迷う」という3つの停滞が蔓延しています。
DXコンサルが生まれたのは、まずは業務を整理し、理想的なフローを固めることが、これらの停滞を解消する基盤になると考えたためです。
以前は導入支援の中で業務整理を行っていましたが、導入と整理を同時に進めるのは双方にとって非常に大きな負荷でした。まずは業務整理し、理想的なフローを固めてからシステム化に入る。この導入支援とコンサルを分離する形が、最もスムーズかつ確実に成果を出せると確信し、サービスとして切り出しました。

―DXコンサルの進め方についてお聞かせください。
まずは現行業務の徹底的なヒアリングから開始します。ここで私たちが大切にしているのは、マネージャー層が把握している俯瞰的な情報を鵜呑みにせず、実際に手を動かしている実務担当者一人ひとりから直接話を聞くことです。
管理職の方は「うちはこうやっているはずだ」と認識していても、現場では担当者の判断でルール外の対応が積み重なっていたり、特定の誰かにしか分からない隠れた工程が存在したりすることが多々あります。
良し悪しの判断を脇に置き、まずは今、実際にどう動いているかを可視化すること。現場がどこで詰まり、何に苦しんでいるのか。そのリアルな声を拾い上げることなしに、正しい設計図は描けません。
―なぜ一人ひとりから聞くのでしょうか。
過去、トップダウンでシステム導入を強行し、現場の反発を招いた経験があるからです。現場の事情を無視した押し付けは、運用後の形骸化を招くだけだと学びました。
だからこそ、私たちは現場の一人ひとりと対面し、このプロジェクトによって、あなたの毎日の仕事がこう楽になるというメリットを丁寧に伝えます。
自分の意見が聞き入れられ、反映されていると実感することで、担当者は上の人が決めた他人事という意識から、自分たちのためのプロジェクトという当事者意識を持つようになります。この自分事化こそが、プロジェクトを成功させる大きな力になります。
―DXコンサルの期間はどのくらいですか。
標準で3ヶ月です。お客様の事情によっては2ヶ月で対応することもありますが、関わる人数が多くなるほど集まる機会も限られるため、やはり3ヶ月は必要だと感じています。
一般的な業務整理を目的としたコンサルであれば、おそらく6ヶ月程度かかるでしょう。ただ、私が手がけているDXコンサルはAGAVE導入を前提としているため、このコンサル単体で完結するものではありません。
いわば助走のような位置づけで、ここから導入支援のフェーズへとスムーズに移行していきます。導入支援の中でもコンサルティングは継続できるため、3ヶ月でまず大枠を整理した上で、細かい部分は導入支援を進めながらさらに深掘りしていく、というイメージです。
―DXコンサルを導入した企業でどのような変化が見られましたか。
最大の変化は、現場担当者の意識が他人事から自分事へと劇的に変わることです。
導入初期、現場の方々は「なぜ今のやり方を変えなければいけないのか」「新しいシステムは面倒だ」と、慎重な姿勢を持つ方も多く、ヒアリングでも最初は何を話せばいいかわからず戸惑う方がほとんどです。
しかし、一人ひとりと対話を重ね、AGAVEで具体的に何ができるかを丁寧に伝えていくと、ある瞬間から彼らの口から「改善」という言葉が自然に出始めるようになります。「だったら、こういう風にはできないの?」「この業務もこうやって楽にできるんですか?」といった、前向きな発想が次々と生まれてくるのです。
一人ひとりの声に耳を傾け、課題をほぐしていくことで、バラバラだった組織のベクトルが揃い、"自分たちのために成功させよう"という意欲的な姿勢へと変わっていきます。
このマインドセットの醸成こそが、その後のスムーズなシステム活用と、定着後の成果を左右する決定的な差になります。

―どのような企業に向いているサービスですか。
駐在員数が数百名規模にのぼり、ステークホルダーが複雑に絡み合っている企業です。特に関係会社が多く、各社の業務を集約しているシェアード会社などは、非常に大きな効果が期待できます。
担当者は自分の担当範囲は熟知していても、全体のフローがどう繋がっているかまで把握できていないケースが多く、社内の力関係や長年の慣習が整理を妨げることもあります。
例えば、駐在員が200人規模で、複数のグループ会社から30人以上の関係者が関わるようなケースでは、社内だけで業務整理を進めるのは容易ではありません。ただ、規模の大小に関わらず、複数部署や関係会社が絡むと、同じような課題が起こりやすくなります。そこで第三者である私たちが入ることで、しがらみを排したフラットな視点から、全体最適のフローを描くことができるのです。
複雑に絡み合った業務を整理することで、どこで詰まっているのか、どこに非効率な承認があるのか、どの情報が不正確なのかが明確になります。そして、それらを一つずつ解消していくことで、海外人事が本来のミッションである駐在員のケアに集中できる環境が整うのです。
―このコンサルティングで目指すゴールは何でしょうか。
「詰まる・溜まる・迷う」という3つの停滞を一つずつ是正し、海外人事担当者がコア業務に向き合える環境を作ること。それがAGAVEというツール、そしてこのDXコンサルが提供する真の価値だと考えています。
具体的には、以下のような成果が得られます。
特に今、駐在員のサポートは非常に重要なミッションです。世界情勢の変化に伴い、駐在員の生活や労働環境も変わりますし、配偶者の現地就労をどう認めるかといった現代的な課題に対し、規定の見直しが求められています。
そのような状況において、多くの企業が部分的な対応で急場をしのいでいるのが現状です。だからこそ、現場をルーチンワークから解放し、戦略的なサポートや制度設計に時間を割ける体制を作ることが重要です。それが、駐在員のモチベーション向上につながり、ひいては企業の競争力を高めることにも直結します。
―DXコンサルを検討する企業は何から考えるべきでしょうか。
DXを進めるうえで最初のハードルは、「今のやり方が当たり前になっていること」です。そのために今の業務をフラットな視線で見直すことが、変革のスタートラインになります。
現場は、想像以上に非効率な作業に忙殺されています。彼らが声を上げるのは文句ではなく、より生産性を高めたいという意欲の表れです。
DXによって得られる成果、つまりコストダウン、属人化の解消、コア業務への集中は、経営層が最も重視すべき指標に直結します。
―DXコンサルを通じて、AGAVEが実現したい海外人事の姿は何でしょうか。
一言で言えば、人が変わっても改善が止まらず、前に進み続ける海外人事の実現です。
海外人事業務の知識やノウハウを個人に依存させるのではなく、AGAVEというプラットフォームを組織の中心に据えることで、属人化による停滞から解放され、常に正確なデータに基づいて判断できる動き続ける人事部をつくりたいと考えています。
その土台があるからこそ、海外人事はより戦略的に、そして駐在員一人ひとりに寄り添いながら、継続的に改善を積み重ねていける組織へと進化できると信じています。
